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デジタルとは何なのか
アナログとデジタルでは何が違うのかという問いに対して、自然界は
アナログでコンピュータの世界はデジタルであるというような表現を耳
にすることはありませんか?
アナログの世界は境目がなくシームレスで、デジタルの世界には境目
があるというイメージを持たれている方もあると思います。
でも、皆さんも小さい頃からデジタル的概念を利用しながら生活して
いませんか。例えば待ち合わせは、いつもの場所で10時にしましょう
と言われれば、9時55分〜10時の間に到着する人が多いのではない
でしょうか。中には9時30分には到着していたり10時を過ぎてから
到着する人もいるかもしれませんが、それは、むしろ例外の筈です。
もう少しこの例を引用して、後日、待ち合わせ場所には何時に行った
のか尋ねられたときに、10時と答える人も多いと思います。9時58
分23秒のように答える人は、まず、いないでしょう。これもデジタル
化です。
この例で示したいことは、10時に待ち合わせという言葉に対する人
の感覚にはある程度の誤差はあっても、それを全て10時としていると
いうことであり、これがデジタル化なのです。デジタル化とは多少の違
いはあっても同じ値として扱うことです。少しはデジタルの便利さを実
感して頂けたでしょうか?
もちろんアナログにはアナログにしかない良さもあり、TPOにより
アナログとデジタルは使い分ける必要があります。
「多少の違いはあっても同じ値として扱うこと」がデジタル化です。
その方が都合がよいことがあるからデジタル化する訳ですが、ここから
はアナログよりもデジタルの方がよい点を示してみたいと思います。
尚、ここでは概念だけを説明しますので、デジタル化のどこが良いの
か理解できないかもしれません。しかし、この後も読んでもらえれば、
デジタル化の良さが少しはわかると思います。
ここからは更にデジタルの世界に入っていきます。普段の生活とは違
う世界に入っていくので、少し考え方を変えなくてはいけなくなります。
「多少の違いはあっても同じ値として扱う」という概念に馴染んでいく
ようにして下さい。
究極のデジタル量は有と無で表すことができます。例えば、コップに
水が入っているか入っていないかを有無で表すとします。コップの底に
水滴が少しくらい残っていても、コップに水が入っているか尋ねられた
ときに、一瞥して(一目見て)入っていないと答える人の方が多いでし
ょう。逆に、コップの上の方に少し空きがあっても、水が入っていると
答える人の方が多いと思います。
この少しくらいの違いは、有るか無いかに影響を与えないという性質
を使うことで得られるのがデジタル化したときの利点です。
デジタル値はノイズがあっても正しく認識でき、また、復元すること
もできます。
ノイズがあっても正しく認識できるとは、何かの拍子で状態が変化し
ても、元の状態を認識できるという意味です。
例えば水が入ったコップを運ぶ途中で水をこぼしたり、その後、雨に
降られて少しコップの水が増えたときに、アナログの世界では、元の水
の量が分からなくなったと考えます。しかし、デジタルの世界ではコッ
プの水の量が半分よりも少なければ元々コップに水が入ってなかったと
認識し、半分よりも多ければ元々コップに水が入っていたと認識するこ
とで元の状態を認識します。
復元できるとは状態が変化しても元の状態に戻せるという意味です。
水が入ったコップを外に放置しておいて、日照りだったり雨が降ったり
して水の量が変わったときに、アナログの世界では元の量がわからない
ので今の状態が元の状態に最も近いと考えます。しかしデジタルの世界
では水の量がコップの半分よりも少なければ水を全て捨てて水が入って
いない状態にし、逆に半分よりも多ければコップの水をいっぱいにする
ことで水が入った状態にできるため、コップに水が入っていない状態も
入っている状態も復元できると考えます。
これを読んで、水の量が誤って伝達されているとか、全然復元できて
いないとか思われるかもしれません。しかし、アナログの概念では情報
の真値が失われる場合でも、デジタル化することで情報の一部でも正確
に残せれば十分な意味があるのです。このことは追って説明します。
もちろん、もしアナログ量を変化させることなく伝達できたり保存で
きるならば、それはデジタル化するよりも素晴らしいことに違いはあり
ません。しかし、現実には不可能であると考えられています。
<つづく>